mainichiwayang’s diary

ジャワでダランとガムラン修行中の大学院生です:)

ワヤン上演のこと

最近ふたつのワヤン上演を観に行ったのでこちらのワヤンの様子について書きます。

 

わたしが勉強しているのは水牛の皮をなめして彩色した平面の人形を使うワヤン・クリッという芸能です。ダランと呼ばれる人形遣いと伴奏音楽ガムランから成ります。題材となる物語はインドの古代叙事詩《ラーマーヤナ》や《マハーバーラタ》です。ダランはよく人形遣いと説明されるのですが、実際は人形操作に加えて、同時に全ての人形の台詞や物語を語ること、さらには上演全体の進行を司り、伴奏音楽の構成も行います。音楽についてはダランが上演中に様々な手段を使って指示を出し、それらや語りは多くの場合即興で行われます。上演は一般的には21:00から翌朝3:00か4:00まで、一晩続きます。その間中、ダランは休みなく上演を続けるのです。わたしはこのダランの多様な能力にとても興味があり、ガムラン音楽とともに研究対象にしています。

 

ワヤンは結婚式や誕生日などの祝い事やお祓いなど様々な文脈で上演されます。ワヤンの会場は露店が並んだりもしてさながらお祭りのようです。誰でも無料で観ることができます。ワヤンの会場には子どもから大人までたくさんの人で溢れています。時にはお茶や食べ物まで出てくることも…!こちらはすべて主催者が料金を負担しているそうです。

 

↑というのがワヤンのざっくりとした紹介です。わたしはワヤンの会場の雰囲気も音楽も大好きで、ワヤンがあればあちこち観に行くという生活をしています。

 

まず10/8(月)にKi Cahyo Kuntadi というダランのワヤンを観に行きました。場所はPalur というわたしの大学から15分ほどのところ。

スピーカーがものすごくうるさかったことと(でもこれはワヤンの会場あるあるです…)本編とは関係ない娯楽の部分がとても長かったこと(おそらくスポンサーが多くてその紹介に時間がかかったいたようです)が少々残念でしたが、音楽の使い方がとても工夫されていて、とても興味深く楽しむことができました。

最近の傾向としては、創作曲短い形式の楽曲を何度も使うことが多いのですが、古典的な形式の曲が多用されているように感じました。また、ソロの様式に加えて、ジョグジャカルタの様式の楽曲も複数あり、日本で自分がワヤン公演に参加した時に用いられていた曲が登場した時はとても嬉しくなりました♪ ジョグジャの形式を取り入れるのはたまに見かける手法なので、もしかしたら最近のトレンドなのかもしれません。

次の日朝の7:30から授業だったので最後まで観られなかったのが残念です。(こちらの1限はめちゃくちゃ早いです…!)でも最後まで観た友人曰く、4:00頃まで盛り上がったのだとか。

 

本日(10/9(火))観たのはKi Jlitheng SuparmanというダランのWayang Kampung Sebelah(これはワヤンのジャンル名)このワヤンはテレビ番組から生まれた新しいタイプのワヤンで、人々の日常を風刺したものだそうです。今日のダランのSuparman はこのジャンルを確立した中心人物の一人で、テレビだけでなくこうして舞台でも上演されます。

人形が一般的なワヤンに比べてより人間に近いかたちをしているのに加えて、音楽もガムランを使わず、西洋楽器とジャワの太鼓で構成されています。

こちらは初めて観るのですが、 人形の動きや音楽を前面に出すと言うよりかは、ダランが登場人物のいずれかを使ってずーっと喋り続けているという印象です。言葉はジャワ語とインドネシア語を混ぜているみたいです。詳細はきちんとわからないのが歯がゆいですが…(!)ダランの語りに、子どもから大人まで会場中が大盛り上がりなので、面白いことを言っているようです。こういう面白いことを言って会場を沸かせることができるということもダランの重要な能力の一つと言えます。ジャワにいるあいだにこういう珍しい様式のワヤンもたくさん観られたらいいなぁ。

 

二つの上演は雰囲気が全然違うのですが、ジャワには後者のような新しい様式のワヤンもいくつか存在しています。また前者のようなワヤンの中でも、創作曲を使ったり、地方の様式が取り入れられたりもして、新しい試みや変化に対して寛容であるというのがジャワの特徴なのかもしれません。

 

ワヤンはこれからもよく観に行くことになりそうなので、引き続きまた紹介していきたいです!

 

ではまた(^^)

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