mainichiwayang’s diary

ジャワでダランとガムラン修行中の大学院生です:)

ダルマシスワ奨学金の閉会式を迎えて

先週(6/17-19)ソロでダルマシスワ奨学金の閉会式がありました。日本を飛び立ったのがつい昨日のことのような気もするのに、あっという間に10ヶ月経ってしまいました。

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今年の閉会式の会場はソロでした。ISI Soloのプンドポにて。



以前、ダラン科はついていくのが大変だという話や、ついていけずに脱落してしまう人も多いと色々な人から聞いていたので、ダラン科で勉強すると決めたものの、本当は怖くて怖くて仕方がありませんでした。

 

確かにいきなりジャワ語のシャワーは本当に大変で、それだけは自分の準備不足というか、反省すべき点だったと思っています。

それでも、これまで丁寧に本を読んで勉強してきたことや、卒論の時にかなりの数のワヤンを分析しておいたこと、そして何よりガムランの演奏を地道に続けてきた経験が活きて、目の前で何が起きているのかということだけは理解することができ、なんとか授業についていくことができました。反省すべきことは多いけれど、それでも脱落せずに、ジャワの学生と同じsemester 1,2の授業を全部受け切れたことは、自分を褒めてあげてもいいのかなと。

 

もちろん、なんとかここまで来られたのは自分の力だけではなく。ここに来る前のわたしは、まだまだやっぱり圧倒的に男社会であるダランの世界の中で(男だからどうというわけではないけれど、やっぱりなんとなく怖くて)わたしは日本人の女性としてうまく立ち回れるだろうかと、そういう心配もしていました。けれども、いざ飛び込んでみると、先生方も学生さんたちも本当に親切な人ばかりでした。わからないことを尋ねると、いつもわたしがわかるまで、丁寧に教えてくださる方が多く、そのおかげで、色々なことをより深く理解することができ、最後まで授業に出席し続けることができました。

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インドネシアでは挨拶する時に握手をするのですが、こちらの人と挨拶するたび、嬉しそうにわたしの手を握り返してくれる方が多く、その笑顔に何度救われたかわかりません。

 

この10ヶ月、名ダランやダラン科の先生方にすぐにお会いできて、色々な話を聞くことができるこの環境、日本にいた頃は、本や映像の中の世界でしかなかったワヤンにまつわる色々な事象を、毎日毎日、目の前で生で目にすることができ、肌で感じることができるこの環境は、本当に素晴らしいものでした。日本にいた頃に生で見たくて見たくて仕方なかったものが、今次々と目の前で起きていることが信じられなくて、嬉しすぎて毎日泣いていた時期もあったくらいです。ダラン科の授業を受け続けることは色々苦労を伴うものではありましたが、それでもダルマシスワ生としての、ダラン科での生活を思う存分楽しめたかなと思っています。

 

ISI Soloに来たダルマシスワの同期生たちは、インドネシア語も、それぞれの学科に配属されたにも関わらず、その専門に関する知識もほぼゼロ(もちろん全員がそうではないですが)という人が多く、わたし自身、最初はとても驚きました。わたしは何年もかけて色々準備してきたから。それでも、物怖じせずにジャワの人に色々なことを尋ねたり、ガムランにワヤンに舞踊にバティックにと色々なことに挑戦する友人が多く、彼らのエネルギーには圧倒されることばかりでした。みんなわたしなんかよりずっとずっとアクティブだったと思う。

 

ダルマシスワ生の間では、英語でコミュニケーションをとることになるのですが、その中で、自分が案外英語を「話せない」ということに気づいたことは、ちょっぴりショックだったけれど、今わかってよかったと思っています。

 

今まで英語を「読む」ことは多かったし、英語は好きだから、それに関しては抵抗はなかったけれど、考えてみれば意識して英語を「話す」機会は本当に少なくて、「あ、わたし、英語を話すことに全然慣れていないな。」と気づいたのです。言葉が出てくるのに他の人より圧倒的に時間がかかる、ああ、まだ世界に出ていくには自分の能力が足りないなと(だから今英語を話すことがすっかりコンプレックスになってしまったのですが)もっと英語も磨かなきゃなと考えているところです。ジャワにきてこんなことを考えるようになるなんて、思ってもみなかったけれど、英語をきちんと「話せる」ようになりたいなと思う最近です。そういう意味でも、ダルマシスワ奨学金を通して世界中に友人ができたことは、良い経験になったと思っています。わたしは日本語でさえ、言葉にするのに時間がかかるのに、その上にjelek (インドネシア語でよくないとか、ひどいという意味)な英語で話すわたしの話をいつも根気よく聴いてくれたダルマシスワ生の友人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。

 

そして何より

あなたはワヤンやガムランのことをよくわかっていて素晴らしいわ。」

とか、

「あなたのやるワヤンが好きだから、閉会式でワヤンをやることになったら、ぜひわたしもガムランの伴奏に参加したい!」

 

と友人たちがいつもあたたかい言葉をかけてくれていたことが、いつも本当に嬉しかったし、それらはわたしの修行を頑張るエネルギー源にもなっていました。

 

閉会式では、火曜日の昼間にマンクヌガランのみなさんと(飛び入りのような形で)一緒に演奏をさせていただきまた、その夜にはTeater Besarで、ISI Solo ISI Jogjaのダルマシスワ生でパフォーマンスを行いました。その中で、わたしは7分間だけですが、ダランとしてperang cakil をやりました。

 

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マンクヌガラン王宮にて。実はここの楽器を叩かせていただくのは初めてだったので密かに大喜びしている図。

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後輩が送ってくれたライブストリーミング中のperang cakilの様子

 

パフォーマンスにあたり、舞踊科の先生方や学生さんが中心となり、演出やコーディネイトをしてくださいました。パフォーマンスはガムランの演奏に舞踊にワヤンにと盛りだくさんなものとなりました。5月末から途中レバランの休暇を挟みつつ、毎日のように放課後3,4時間練習を続けてきました。その間授業やレッスン、ルーティーンの練習やワヤン上演なども休みなくあったので、体力的にとてもキツかったし、そんな中で自分のモチベーションを保つのもなかなか大変でした。

 

 

演出の関係でギュッと短く凝縮したperang cakilcakilArjunaの戦い)をやることになり、短い分、人形操作や語り、suluk(歌)をかなり丁寧に練習して臨みました。その甲斐あってから、「うまくなったね!」と色々な方からお褒めの言葉をいただくことができました。当日後ろから歓声が上がったこともとても嬉しかったのですが、あまりにも盛り上がっていたので(なんだか会場中がハイになっていたように思いますびっくりしすぎてしまい、逆に緊張してしまいました

 

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パフォーマンス終わりにみんなで撮った記念写真

Perang cakilはそれ自体がとても技術を要する場面なので、大分練習は続けてきたつもりですが、まだまだ事故が起きることも多いし、その上自分がいつも色々なワヤンを観ていて、すごいダランのperang cakilを知っていることもあり、自分のパフォーマンスはまだまだだと思っているのですが

 

どんなに拙くても、ジャワの人たちが

「すごいね!」

と口々に褒めてくれることや

外国人の友人たちが

「ダランができるなんて、あなたと友だちになれたことを誇りに思うよ!」

と言ってくれることが、なんだか夢のようです。

褒められるとなんだか恥ずかしくて埋まりたくなってしまいまうんです(照)でも多分、もうちょっと胸を張って生きていてもいいのかもしれないなと思ったりもします。だけど、それは今のわたしにはまだまだ難しそうです。

 

 

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本番前、先生方と。

 

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ここにいて、ワヤンやガムランのことを勉強していると、時たまジャワの人から

 

「わたしたちのbudaya(文化)を愛してくれてありがとう。

と言われることがあります。

 

けれどもわたしは常々、ジャワの人たちに対して

こんなわたしをジャワのコミュニティの中に受け入れてくれてありがとう、そしていつもわたしのワヤンやガムランの活動を応援してくださって、ありがとうございます。」

 

と思うのです。

 

 

わたしのジャワでの修行はまだまだ続くのですが、ダルマシスワ生としてはここで一区切り。思い返してみると、本当に良い出会いに恵まれたなぁと思います。るこれまでお世話になった友人やジャワのみなさん、いつも応援してくださっている日本の方に心から感謝の意を表したいと思います。

 

Terima kasih selalu...!!

 

これまで、チャキルと戦い、グンデルを弾きまくり、目の前で起きている興味深い出来事に、ああ修論どうしようかなと考えを巡らせていたら、あっという間に時が過ぎてしまった感があるので、本当に月並みだけれど、限りある時間を大切に、今後も修行を重ねていきたいです。