mainichiwayang’s diary

ジャワでダランとガムラン修行中の大学院生です:)

ワヤン上演のこと②

前回からちょっと間が空いてしまいましたが、(というのは、最近毎日のようにワヤンを観に行っていたからなんです…。)相変わらず元気です(^^)

 

いくつかワヤンがあったのですが、今回も二つのワヤンをレポートします。(留学が終わるまでに何回レポートできるだろうか…?)週末土曜と日曜に二晩続けてワヤンがあり、幸運なことに二つとも売れっ子ダランでした。一つはマンタップ・スダルソノKi Manteb Soedharsono 、もう一つはプルボ・アスモロPurbo Asmara によるものでした。

 

マンタップさんのワヤンは、ワヤンの街クラテンというところのフェスティバルの中で行われたものでした。これは、1970〜80年代に活躍したダラン、ナルトサブドを偲んで行われたものだそうです。

楽器のすぐ後ろで観ていたのですが、気になったのは楽隊の人たちがみんな何枚もの楽譜の束を携えていたこと。即興で曲が決まるものなので楽譜によらないのが本来のやり方なのですが、音楽の付け方は相当作り込まれているように感じました。また、ガムランの音階も一つの音階しか使わないというのが基本のスタイルですが、二つの音階を頻繁に変えながら上演を進めていたというところにもそれを感じました。(事前に打ち合わせをしておかないと、頻繁に別の音階の楽器を使うのに対応するのは難しいのではないかと思います。)それで、結果的にかなりたくさんの楽曲を使っていて、変化に富んでいて聴いていて面白かったです。

 

その中で、マンタップさんがよく取り入れている、中間部でのジョクジャカルタ様式の使用や、ダイナミックな人形操作もあり、マンタップさんらしさもきらりと光る上演でした。人形が色々な方向へ飛ばされていたのでダランの助手が大変そうでした…。最近自分でも戦いの場面を練習しているのですが、小さな人形を戦わせるだけでも相当な技術がいるのに、大きな鬼の人形を軽々と戦わせていたのは圧巻でした。(マンタップさんは人形操作の天才として有名なダランでもあります。)

最近の傾向だと、多くの上演で、最後のマニュロの部分ではひたすら戦いの場面でサンパという短い形式の楽器が鳴り続けていることがしばしばあるのですが、今回は戦い続けるだけでなく、随所随所に語りもしっかり入っていました。

 

音楽の使い方、人形操作、語りとやっぱりオールマイティーだなぁ、さすが大御所だなぁと改めて感心してしまいました。今年70歳になられるのだそうです。それでいて一晩の上演をエネルギッシュにこなすマンタップさんは本当に素晴らしいと思います。(彼の人形操作があまりにも鮮やかで、DVDを観ながら泣いてしまったことがあるくらい好きなダランです。)

 

余談ですが、クラテンまでは友人のバイクの運転で行きました。1時間半くらいかかったかな。インドネシアではバイク移動が主流なのですが(わたしは怖いので運転はしませんが)バイクの後ろに乗るのはとっても気持ちがいいです。その途中、ワヤン会場までgoogle mapに従って進んでいたはずなのに、気がついたら一度通り過ぎたはずの場所に戻ってきてしまったことがありました。とても驚きましたが、ワヤンのかみさまのいたずらかもしれません…。

 

二晩続けては初めてだったのですが、翌日も観に行ってしまいました。ここからはプルボさんのワヤンについて書きます。

 

芸術大学のダラン科に通い始めて1ヶ月がたったのですが、今は基本をしっかりと学んでいるところです。ワヤン上演の進行には一定の型があります。プルボさんの今回の上演は、最初長めのスルック(またはモチャパットかもしれません)で始めるというところは少々意表をつくものでしたが、そのあとはしばらく基本の型通りに上演が進んでいきました。大学の授業で習ったシーンを見るたび、嬉しくなりました。大学に行くようになって、見えるもの聞こえるものが大分増えたのでワヤンに行くのがますます楽しくなってきた気がします。

 

リンブアンという娯楽の場面あたりまでは定型通りに進んでいたのですが、そのあとは徐々に定型とは異なるスタイルになっていきました。(創作と思われる曲が使われたりなど。)

 

特にヌムの場面(第一部)が4時間超えと異常に長いのが気になりました。リンブアンが終わったあともとても長かった…。

さらに、パテット(旋法)をまたいでおなじ曲が使われていたことがあり、興味深いなと思いました。卒論を書いた時から三つの場面がアンバランスになる傾向があることがとても気になっていたのですが、これは顕著な例です。

 

スルックの節回しも聞きなれないものがいくつかありました。スルックの節回しについてはそれぞれどんなルーツがあるのか、ダランがどのように取り入れているのかなどいつか研究してみたいなと思っています。

 

プルボさんは最初から最後まで定型通りの上演をすることもあり、また時には、それにはまらず、ハイライトを取り入れるなど工夫を凝らした上演をすることもあり、時と場合によってスタイルを変化させることができるダランです。色々なスタイルはやはりしっかりとした基本の型の上に成り立つものなのだろうなと感じました。

 

二日間ともわたしのグンデル(楽器)の先生がグンデルを担当していました。二晩続けてなんて、ジャワの音楽家は本当にタフです。

先生はよくワヤンの時のグンデルの弾き方のコツについて話をしてくださいます。まだレッスンは始まったばかりですが、ワヤン会場で先生の音に確かにそのエッセンスが散りばめられているのを聞くことができました。よくダランの様子をうかがって、音型を選んで弾いているということを先生は話していますが、そう思いながら聞くと、ますますグンデルはすごいなぁと思わずにはいられないのでした。

 

次回は何か上演以外のことにスポットを当ててみたいと思います。

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