mainichiwayang’s diary

ジャワでダランとガムラン修行中の大学院生です:)

まいにちワヤン、まいにちレッスンと化す

いつも読んでくださりありがとうございます。今回は年末年始に受けていたガムランのレッスンについて書きます。

 

わたしはこちらで影絵芝居ワヤンの勉強中ですが、同時にガムランという音楽も勉強しています。ワヤン、特に人形遣いダランは伴奏音楽として使われるガムランの音楽の仕組みを理解していることが重要だからです。

 

わたしとガムランとの付き合いは、この春で8年目をむかえようとしています…実はワヤンよりもガムランの方が付き合いが長いのです。ガムランはわたしの人生をガラリと変えてしまうほど楽しくて(いつかガムランとのかかわりについてもブログにしたいです。)最初に書いたように、ワヤンをより深く理解するためという理由もありますが、ただ純粋に好きだからガムランがもっと上手くなりたいという思いもあり、留学してガムランのレッスンをたくさん受けることは、長い間わたしのやりたいことの一つでした。

 

というわけで、こちらに来てからは週に一度のペースで授業後に2時間くらい、グンデルという楽器のレッスンを続けてきました。ガムランは楽器の種類が多く、楽器の選択肢は色々あるのですが、グンデルを選んだのはダランの歌の伴奏に使われるからという理由と、グンデルが好きなので、将来的に、グンデルを得意な楽器にしたいという理由からです。わたしの日本のグンデルの師匠が、ジャワで合奏をする際、よくグンデルを弾いていて、まるでグンデル屋さん状態になっているのをそばで見てきたので、その姿にとても憧れています。

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グンデル。鍵盤を両手で弾きます。音が濁らないように手のひらで止めながら弾くのが難しい。

わたしもいつかグンデル屋さんになりたい…!

 

わたしのジャワでの師匠は、ワヤンのグンデル屋さんとして有名な方です。色々な人に尋ねても、「グンデル習うならこの人がいいよ!」といちばんに名前が挙がります。実際お話してみるととても気さくな先生で、レッスン中もいつも励ましてくださるので、モチベーションも高まり、元気が出ます。

 

当初はダランの歌の伴奏を教えてくださいと言って、実際少し習ったのですが、それよりもまずは基礎固めということでここ数ヶ月は普通の曲に使うグンデルの音型を習っています。

 

年末から大学がお休みになり、時間ができたので、年末年始は怒濤のまいにちレッスンをすることに。元旦と土日を除き、12月28日から、1月11日までレッスンをしました。

 

レッスンのメニューは、この前シンガポールの人たちと一緒にJinemanを習った他に、グンデルで、ある音からある音までの音型のパターン(セレselehからセレまでのチェンコcengkok)を全部習うことがメインでした。

ガムランの楽譜には、すべての情報が書かれているわけではなく、楽器によっては楽譜に演奏の仕方が書いていないものも多いのですが、グンデルもそうした楽器の一つです。今回こうしたパターンを習うのは、最終的に楽譜を見て自分で使用する音型を分析し、弾けるようにするためでした。パターンはかなりあるので、基本的なものを習いました。そして、「君はダランなんだから、なんでもできなきゃいけないよ。」ということで、太鼓、ガンバン、スリンも習いました。

 

しばらくレッスンを続けてきて、少しずつ自分で楽譜を分析できるようになってはきたものの、まだまだところどころ自分だけでは分析できないものも出てくるというのが現状です。なので、今回こうしてざっとパターンを習えたことはかなり勉強になりました。ただ、数が多く、また、拍と拍の間隔(イロモirama)によってもパターンが少し変わってくるので、まだきちんと消化できていませんが、これから練習を重ねて自分のものにしようと思います。

 

先生の教え方は、大学の先生であるということもあり、とてもシステマティックです。

複雑なグンデルの音型を全部楽譜にしたり、最初に曲の概要を大まかに説明したりしながら、丁寧に教えてくださいます。教え方には色々あると思いますし、楽譜を使うことも善し悪しということはあると思いますが、わたしは、正直すぐ真似したり覚えたりできる方ではないので、楽譜に書いてくださるのはありがたいです。何より構造が可視化されると頭が整理されるので、覚えやすいです。

 

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先生が書いてくださったもの。グンデルのパターンを楽譜にするとこんな感じになる。

雰囲気に合った良い演奏、味のある演奏をすることを「ラサrasaがある」とこちらでは表現したりするのですが、音型のパターンがひと段落すると、その「ラサ」の出し方ということもレッスンをしてくださいました。止め方やアクセント、リズムを少し変えて弾くことで、より「ラサ」が出るのだそうです。(書くのは簡単ですがこれがだいぶ難しい。)

わたしがワヤン好きということもあり、「ワヤンのラサはね…」とか「ワヤンではなくて演奏会の時はね…」とか弾き方の違いの話をしてくださることもあるので、いつも本当に興味深くて面白いです。

 

今回、太鼓とガンバン、スリンを習ったのもとても楽しかったです。

 

太鼓は音の出し方と、スカラン(太鼓の手組み)の確認、ワヤンの太鼓(ladrangの時にsirepやsuwuk gropakにするにはどうするのかということ)を習いました。

先生が違うので、音の出し方は日本でやっていたのと少し違ったりして少し戸惑いましたが、確かにきれいな音が出せそうなので練習してみたいです。手組みに関してはより細かい手が入ったりして、自分でも早く身に付けたいと思いました。

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太鼓とガンバン。ガンバンが楽しくて仕方ないの図…笑

 

ガンバンは、ガンバンの音型の作り方には色々なプロセスがあるという話と、実際にウィルジュンwilujengという曲ではどう弾くのかということを習いました。やはり先生のお手本だとちょいちょい細かい音が入るので、真似するのは結構大変ですが、実はガンバンが楽しすぎてここのところ毎日練習しています。何屋さんになりたいのかわからなくなってきた…笑

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ガンバンと先生

最終日は少しだけスリン(笛)をやりました。音の出し方と練習用のパターンを習いました。指穴が4つしかないのですが、息の量で音の高さを調節します。高い音がなかなか難しいです。風が吹くかのごとく涼しい顔でスリンを吹ける境地になるにはまだまだ時間がかかりそうです。

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グンデルとスリン

 

よく先生に言われるのは

「Kamu menjadi sensei !」(君は日本に帰ったら先生になるのだから。)

ということと、最近嬉しかったのは、

 

「ジャワにちょっと来てすぐ帰る外国人だったら、弾けるようになったね〜!で済ませてしまうけれど、君はしばらくいるのだから、きちんとラサを出せるようになってもらいたいし、そういうふうにに教えるつもりだよ。」

というお言葉でした。

 

先生が本物を伝えようとしてくださっていることが、本当に嬉しいです。一方で、「先生」としてそれを日本で伝えるということがわたしには期待されているということ、ジャワの人も、ぜひジャワの文化を日本に持ち帰って伝え広めてほしいと願っているということが、改めてはっきりしました。確かに、「ガムランを人に教える」ということはわたしの夢でもあるのですが、その責任を果たせるように、先生からより多くのものを、しっかり受け取らねばと思いました。

 

時々、わたしはちゃんと頑張れているかな、帰るまでにどれだけのことを身につけられるだろうかと不安になったりもします。ですが、集中してレッスンを受けている途中、ふと「ああ、こういう生活がわたしが本当にやりたかったことだ、幸せとはこういうことかもしれない。」とも思いました、留学もレッスンもまだまだ続くので、自分にできることを引き続き頑張りたいと思います。

 

次回は久しぶりに、最近見たワヤンのことを書く予定です。

ではまた♪