mainichiwayang’s diary

ジャワでダランとガムラン修行中の大学院生です:)

Hari Wayang Dunia ②

前回はHari Wayang Dunia 全体のことを書きましたが、今回は11月8日(木)に自分が上演したワヤンのことについて書きたいと思います。

 

今年の春にジャワに行ってワヤンの先生にレッスンを受けた時、11月にワヤンのフェスティバルがあるから、留学したら出るようにと先生に言われ、その時はイメージができず、ああそうなのかくらいに思っていたのですが…。

 

10月くらいからダラン科はずっとHWDモードで、学生も先生も授業が終わると毎日それぞれの準備や練習をし、少しずつ盛り上がっていく様子を見て、事の重大さがわかっていきました。実際当日舞台を見ると、大きなプンドポの中に3つのクリルが張られ、とても大掛かりなフェスティバルでした。特に一番奥のクリルは枠に金色のガラスの装飾も付いていてキラキラ光り輝いている…!一体私はどのクリルを使うのかなと思っていたら、なんとそのいちばん立派なクリルだったので、本当に驚きました。マンタップさんやプルボさんが使ったのと同じクリルだったのですから…!

 

当日はジャワの正装でということだったので朝からダラン科の女の子たちが手伝ってくれて、着付けをしました。クバヤとカイン(レースのブラウスみたいなものと巻きスカート)は何度も着たことがあったのですが、今回サングル(女性の伝統的な付け毛)を初めてつけました。(ずっとつけてみたくて、大分前から楽しみにしていました…!)ジャワのお姫様気分で、それだけでわくわくしますね。ただ、頭が重くなって大変かなと思っていたのですが、実際つけてみるとそうでもなく、どちらかというと慣れない付けまつ毛が目に入ってビビったのは内緒…。

 

ワヤンの実技は2015年の春に始めました。その当時、ワヤンやガムランとの向き合い方が一瞬わからなくなって苦しい思いをした時期があったのですが、その時に、ワヤンも自分でやってみたらもっとわかるようになるかもしれない、道が拓けるかもしれない、そういう思いでワヤンの実技を習うようになりました。最初はそれだけで、今思うとなかば勢いだけで飛び込んでしまったような感じがします。人形操作をすること自体も難しいのに、歌を歌ったり、全キャラクターのセリフを言ったり、両手両足を全部使いながらガムランに指示を出したりもするからです。相当大変だということは考えればわかったはずなのに、気がついたらワヤンを習い始めていた自分がいて、自分で驚いたこともありました…笑

 

というわけなのでもう始めて3年は経っているのですが、留学前は年に一二回しかジャワには行けなかったので、少しずつ少しずつ練習を進めてきました。短期で行くたび、先生が何度も繰り返し教えてくださったのと、わたしが所属する日本のガムラン・グループ・ランバンサリの方が練習や発表の機会を作ってくださったお陰で短いワヤンができるくらいには勉強を進めることができました。これまではほとんど人形操作をするという部分がメインで、語りや音楽との関係はまだまだ不十分というのが、留学前の状態でした。

 

今回、正直できるかとても不安だったのですが、先生のアドバイスもあり、Banbangan dan Panakawan からPerang Kembang (アルジュノとポノカワンの道行きからチャキルとアルジュノ、ラクササによる華の戦い)を演目に選ぶことになりました。Perang Kembang は、ワヤンの中でもいちばん難しいと言われる戦いの場面です。二体の人形が戦い、人形の手に付いている棒をぶつけたり、短剣や矢などの小道具を使ったりもするので、一つ一つの動きが本当に難しかったです。今年の春に少し練習を始めたのですが、初めは片手で人形を持つことさえもままならず、人形が戦っているように見えるまでに大分時間がかかったように思います。9月は先生の都合であまりレッスンができず、戦いの場面のほとんどを10月に追加したので、一時はどうなることかと不安になりましたが、なんとか形になったのでほっとしています。しかも今回は“ジャワ語で語る”ということにもチャレンジしました。当初は人形を動かし、途中歌を歌うだけの予定だったのに、「授業で使っている台本通りでいいから喋りなさい。」と先生からの司令が…。事あるごとに色々な要素がどんどん追加され、最初は30分以内ということだったのに、気がつけば40分くらいの上演になってしまいました。レッスンの時にはこれまであまり指摘されなかった合図のことや、音楽の拍を意識することなどを注意するようにとの指導が増え、大変ではあるけれども、人形を動かすことに留まらず、自分が次のステージに進みつつあるということがわかって嬉しくなりました。

 

とは言えキャラクターの声の作り方やジャワ語にはまだまだ不慣れだし、合図もうまくいかなかった部分もあるので、まだまだ修行が必要だなと思いました。

 

本番にはやはり魔物がいるようで、練習の時には忘れなかったチャキルとアルジュノの対話をまるまる忘れて次の曲(スルパガン)の合図を出してしまいました。想定外だったので気づいた時には自分でもびっくりしました。ところが、魔物もいるけれど神さまもいるらしく、語りを忘れているぞとチャキルの声が聞こえてきました。そして、スルパガンはふっとシルップ(語りを入れるためにガムランの音が小さくなること)になり、わたしはなんとか語りを入れることができたのでした。

 

人形がいい人形すぎて焦ったなぁ、チャキルがいつものチャキルの顔と全然違かったのです…。

 

実はこのようなハプニングもあったのですが、無事ジャワでのプンドポデビュー公演を終えることができました。

観ていた留学生の友人の一人が、「あんなに人形を激しく戦わせるなんて、普段のあなたからは想像できないから本当に驚いたよ、プロフェッショナルだね!」とベタ褒めしてくれたのがとても嬉しかったです。(※わたしは全然プロフェッショナルではないけれど。)

 

本当に普段のわたしは人の前に出る性格でもないし、どちらかというと恥ずかしくて土に埋まりたいと思いながら生きているのに、一方で、そんなわたしが気がついたらダランを勉強している…。やっぱり今回の舞台が本当に楽しくて、いつか機会があるならまたやりたいと思っているわたしがいるので、人生って本当に何があるかわからないなと思います。

 

今回はわたしの前にハンガリーからの留学生ズーザZsuzsa も出陣の場面を上演しました。ガムランもワヤンも初めてだという彼女は、ダラン科のジョコリアントJaka Rianto先生が留学生のために開いてくださっていた練習会の中で、今回の上演に大抜擢されました。2ヶ月ないくらいの時間で人形を動かすだけでなく、歌ったり、語りを入れたりもしていて、彼女の物覚えの速さに圧倒されました。わたしはどちらかというと不器用な方なので…。本番、本当に堂々としていて素敵でした。わたしの大好きなドゥルソソノが出てきた時には本当にわくわくしました。

 

自分の不器用さに目がいってしまうこともあるけれど、色々な国の友人と出会い、ワヤンやガムランのよさを分かち合えることは本当に素晴らしい時間だと思います。今回、何人もの留学生仲間がガムランの伴奏を手伝ってくれて(しかもその一人はグンデルを弾いてくれて)それもまた楽しい経験になりました。また、練習ではたくさんの学生も手伝ってくれて、たくさんあたたかい励ましの言葉をかけてもらいました。素晴らしい環境に感謝の気持ちでいっぱいです。

 

留学早々贅沢な経験をさせていただいたこと、本当にありがたいことです。あの舞台でワヤンをしたこと、一生忘れないと思います。今回のために、何度も留学生を指導してくださったジョコリアント先生、お忙しい中レッスンしていただき、熱心に教えてくださったハリヤディ先生に心から感謝の意を表したいと思います。

 

こういう素敵な環境にいられることに感謝し、またいつかジャワや日本でワヤンができるように、今後も日々修行を頑張りたいです!

 

長々すみません、また書きます(^^)

 

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